2024年度ひかり協会事業計画・予算に対する意見・要望
森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会
2024年度は、引き続き第三次10ヵ年計画前期の重要課題への対応が重視される。また、2019年より感染拡大した新型コロナウイルスへの感染予防の対応が継続されることとなる。守る会は、これらの課題への対応をふまえ、次の事項を意見・要望とする。
1.基本的事項
(1)第三次10ヵ年計画に基づく取組
2024年度は、改正された金銭給付基準及び2つの重点事業である障害のある被害者の生活設計実現の援助事業とすべての被害者の自主的健康管理の援助事業の各援助要綱、救済事業協力員制度要綱の周知と理解の促進を図られたい。
救済事業の関係では、2つの重点事業の促進を図られたい。
「終生にわたる事業と運営・体制の構想」の関係では、守る会の「提言」をふまえた「構想」(案)の関係者による検討を促進されたい。
(2)三者の協力
「あり方」に基づく2つの重点事業の実施にあたっては、三者の協力を重視されたい。また障害者総合支援法関連施策及び医療保険制度、介護保険制度等の救済事業に関連する社会保障制度改革については迅速に把握・対応し、三者の協力の促進を図られたい。
(3)守る会の組織的協力
現地二者懇談会や救済事業協力員活動の「事業推進の軸」の活動における守る会の組織的な参加と協力を重視されたい。
(4)専門家及び行政の協力
地域救済対策委員及び相談員の役割を重視し、2つの重点事業の促進を図られたい。
「行政協力の仕組みづくり」では、厚生労働省通知の活用など、4項目の取組を重視されたい。また、ブロックごとの都府県行政協力懇談会を重視されたい。
厚生労働省通知に基づく障害のある被害者のサービス事業を積極的に活用するための行政協力の促進を図られたい。特に「生活の場」の確保に係る厚生労働省事務連絡(2016.9.26)は重要であり、積極的に活用されたい。
二者懇談会での協議により、厚生労働省通知に基づき市町村に写しが交付される対策対象者名簿の登載を促進し、登載被害者に対する適切な相談対応の具体化を市町村に要請されたい。また、市町村の対応事例を行政協力懇談会や二者懇談会、救済事業協力員研修会議で報告されたい。
2.具体的事項
(1)相談事業
ブロック内における救済事業協力員活動の促進を図るため、救済事業協力員の配置を促進し、必要によりブロック研修会議の開催を検討されたい。
今後、退職等に伴い多くの被害者にかかわる公的制度に変化が生じるため、制度活用を促進させるための情報提供を重視されたい。
障害のある被害者の生活設計実現に係る相談(健康課題、社会的孤立など)では、オンラインも含めた丁寧で細やかな相談対応を考慮されたい。
対策対象者名簿に基づく市区町村の相談対応について、被害者・地区センター事務所・市区町村の関係を図式化し、被害者に周知されたい。
地区センター事務所における事務所体制を強化し、研修等を通じて相談事業の充実を図られたい。また、勤続年数の少ない職員の本部研修を継続されたい。
(2)保健・医療事業
保険診療扱いの医療費の援助を継続されたい。
今後、1年から2年で被害者は概ね70歳となり、医療費の窓口負担が大きく変化するため、制度活用で必要な情報提供など、事前の対策を重視されたい。
また、医療費申請を簡略化し、代理人手続きを容易にするため、申請の説明書を作成されたい。
アンケート①被害者の検診受診率を引き上げ、定着を図られたい。また、がん検診の有効性に基づく受診を推奨されたい。
がん対策(肝炎対策を含む)を強化し、禁煙対策を含む生活習慣病の予防を重視されたい。
高齢期への備えの一環として、かかりつけ医及びかかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師(薬局)の重要性について、被害者に情報提供されたい。
守る会及び救済事業協力員の主体的な意見を重視した健康懇談会の開催により、生活習慣病の重症化や認知症・フレイルなどの高齢期の心身の変調に対する被害者の日常的な健康増進対策を促進されたい。
(3)生活の保障・援助の事業
保健所・福祉事務所・主治医・事業所などの地域の支援ネットワークづくり及びそのための行政協力の促進、社会保障制度改革等(障害者総合支援法関連施策の動向等)の情報提供を重視されたい。特に単身生活の障害被害者の緊急時(入院、災害発生時等)の支援を準備し、関係自治体との連携を図られたい。高齢化に伴い、意思決定支援を促進されたい。
親と同居している障害被害者の自立への取組は緊急を要するので、相談支援の充実や成年後見制度等の活用も含め早急に対処されたい。
二次障害の対策を軽度者も含め促進されたい。また、そのために理学療法士等の専門家による相談対応に取り組まれたい。
糖尿病や高血圧等の疾病及び症状のある知的障害や精神障害のある被害者への対応策を図られたい。また、誤嚥性肺炎の予防を重視されたい。
「生活の場」の変化について、被害者本人の希望や親族の意向もふまえ、不安なく安全に移行できるよう支援されたい。
地域社会の高齢化に伴う安定した交通移動の体制確保のため、守る会とともに国や自治体に対し、「三者会談」や行政協力懇談会などで引き続き協力を要請されたい。
障害者総合支援法や介護保険制度、成年後見制度等の動向をふまえた相談事業の強化を図られたい。特に介護保険優先原則に係る課題が発生した場合には、行政協力を得て改善されたい。
精神障害者の社会復帰施策では社会資源が乏しいため、行政との連絡をとりながら、これからの生活に必要な対応と配慮をされたい。
(4)自立生活促進事業
被害者実態調査では、65歳以降も就労継続を希望する障害のある被害者が多いため、ハローワークなどへの就労支援を要請されたい。
(5)調査研究事業
被害者の自主的健康管理の取組を促進させ、事件の風化防止を図るため、疫学研究を継続し、節目において公表されたい。
また、ミルクの飲用ががん罹患などに及ぼす影響を研究調査し、公表されたい。
(6)認定事業
全被害者救済のための未確認飲用者の認定事業を継続されたい。
(7)広報事業
会報「ふれあい」は、分かりやすい文章で様々な情報が提供されている。今後も充実した紙面作りをお願いしたい。また、「守る会からのお知らせ」掲載を継続されたい。
(8)その他
現地二者懇談会で協議し、2つの重点事業を促進させることを目標にした「自主的グループ活動」及び被害者同士のつながりを重視した「ふれあい活動」の促進をオンラインの活用も含めて援助されたい。
被害者の高齢化に伴い、外出が困難となることが予想されるため、協会事業におけるWebの積極的な活用を検討されたい。ただし、Web環境でない被害者も存在するため、必要によりハイブリッド方式による設定を検討されたい。
ブロックの状況をふまえた現地交流会の開催を重視されたい。
現地交流会や救済事業協力員研修会議などで成年後見制度、医療保険制度、介護保険制度、「終活」、「終末医療」などについての学習の機会を検討されたい。